坎(かん)の卦(か)初六(ろくしょ):穴に落ちたらまず「習坎入坎(しゅうかんにゅうかん)」——動揺せず落ち着け
挫折に遭ったり、思わぬピンチに陥ったりしたばかりの時、人は愚かな行動を取りがちだ。怖気づいて動けなくなるか、焦ってむやみに動き回るかのどちらかだ。坎為水の初六(初六)は「危険な状況に入ったばかりの時、一番すべきなのは足掻くことではなく、冷静になること」と教えてくれる。まず状況を把握してから、打開策を考えよう。
こんな経験をしたことはありませんか:
突然届いたメッセージ——リストラされた。
突然かかってきた電話——家族が病気になった。
突然気づいた——大金をだまし取られた。
その瞬間、頭の中が真っ白になる。
それからめちゃくちゃになる:
「どうしようどうしようどうしよう?」
「終わった終わった終わった」
「誰に頼めばいい?何をすればいい?」
人は落とし穴に落ちたばかりのとき、一番馬鹿げたことをしがちだ。
坎卦の初六がまさにこの状態を指している。
「習坎入坎、失道凶也(しゅうかんかんにいり、みちをうしなえばきょうなり)」
初六の爻辞はこう言う:「習坎、坎窞に入る、凶」。
落とし穴が次々と続き、深い穴の底に落ちてしまう、危険な状態だ。
『小象伝』の解説はもっとわかりやすい:「習坎入坎、失道凶也」。
落とし穴に落ちたばかりで慌てふためき、進むべき方向が見えなくなるから凶なのだ。
注意してほしいのは、「落とし穴に落ちたから凶」なのではない。
「道を失う(失道)」から凶なのだ。
落とし穴自体は怖くない。怖いのは、穴の中で自分を見失うことだ。
慌てて、混乱して、どこへ行けばいいかわからなくなる——それが本当の危険なのだ。
トラブルが起きたばかりのとき、人はなぜ混乱するのか
なぜトラブルに遭ったばかりのとき、人は一番混乱しやすいのだろう?理由は3つある。
理由その1:情報が少なすぎる
トラブルが起きたその瞬間、あなたは何もわからない。
リストラされても、なぜ自分なのか、補償はどうなるのか、これからどうすればいいのか、わからない。
家族が病気になっても、重症なのか、治療費はいくらかかるのか、治るのかどうか、わからない。
情報が少ないほど、人は慌てる。
人間の脳は不確かさが嫌いだからだ。
不確かなとき、人は最悪の事態を想像してしまう。
考えれば考えるほど怖くなり、怖くなればなるほど混乱する。
理由その2:感情の衝撃が大きすぎる
どんなことでも、起きたばかりのときが一番衝撃が大きい。
水に落ちたとき、最初の反応は間違いなくもがくこと、水をむせることだ。
泳げないわけじゃない。突然落とされれば、誰だって一瞬ぼうっとする。
感情が高ぶっているとき、頭は働かない。
このときに下す決断は、十中八九間違っている。
理由その3:他人に知られるのが怖い
多くの人はトラブルに遭うと、最初に考えるのが解決法ではなく、「他人に知られないかな」「恥ずかしいな」ということだ。
リストラされたら、親戚や友人に笑われるのが怖い。
お金を失ったら、家族に責められるのが怖い。
別れたら、自分が失敗したと思われるのが怖い。
トラブルそのものに対処しながら、体裁の問題にも対処しなければならない。
二重のストレスで、混乱しないわけがないだろう?
落とし穴に落ちたばかりのとき、一番すべきなのはもがくことではない
多くの成功法則はこう教える:困難に遭ったらすぐに行動し、立ち向かい、諦めてはいけない、と。
だが坎卦の初六が教えてくれるのは、それとは正反対のこと——
落とし穴に落ちたばかりなら、急いで動くな。まず落ち着け。
なぜか?
落ちたばかりのときは:
- 穴がどれくらい深いかまだ見えていない
- 周りがどういう状況かまだわからない
- 気持ちがまだ落ち着いていない
この状態でむやみに動けば、ますます深みにはまるだけだ。
沼に落ちた人を見てごらん。もがけばもがくほど、早く沈んでいく。
逆に動かないでいれば、もう少し長く持ちこたえて、助けを待てる。
危険な状況では、むやみに動くより動かないほうがいい。
動かないのは死を待つのではなく、状況を把握する時間を自分に与えるためだ。
落ち着くための3つのステップ
では具体的にどうやって落ち着けばいい?3ステップだ。
ステップ1:まず呼吸する
当たり前のことに聞こえるかもしれないが、本当に効果がある。
人は緊張すると、呼吸が浅く速くなる。
呼吸が乱れれば心拍数が乱れ、心拍数が乱れれば頭が混乱する。
だから、トラブルに遭った最初の1分間は、何も考えず、何もしないで。
深呼吸をする。
4秒かけて吸い、4秒止め、4秒かけて吐く。
これを10回繰り返す。
すると、少しずつ頭がはっきりしてくるのがわかるはずだ。
それほど慌てなくなる。
物事を考えられるようになる。
たった1分で、大きな失敗を避けられるかもしれない。
ステップ2:状況を把握する
呼吸が落ち着いたら、次は状況を把握する——一体何が起きたのか、はっきりさせる。
推測したり、勝手に悪いほうに考え込んだり、自分で自分を怖がらせたりしないこと。
確認し、聞き、調べる。
リストラされたなら、はっきり聞く:なぜ自分なのか?補償はいくらか?いつまでに退社するのか?
投資で損したなら、はっきりさせる:いくら損したのか?残りはいくらか?取り戻せるのか?
恋愛で問題が起きたなら、はっきり考える:ただのケンカなのか?それとも本当に別れるのか?
「かもしれない」を「確か」に変え、「だいたい」を「具体的」に変える。
情報がはっきりするほど、慌てなくなる。
相手の手札がわかれば、自分がどう出すべきかもわかるからだ。
ステップ3:急いで決断しない
状況を把握した後も、急いで決断してはいけない。
特に大きなこと——仕事を辞めるかどうか、別れるかどうか、投資するかどうか、家を売るかどうか。
こうしたことは、トラブルが起きたばかりのときに決めてはいけない。
一晩寝てからにする。
24時間経ってからにする。
3日経ってからにする。
なぜか?
人は感情的になっているとき、知性がゼロになるからだ。
理性的に考えているつもりでも、実は感情が決断を下しているだけ。
感情が落ち着いてから振り返れば、こう思うはずだ:
「あのときああしなくてよかった」
重要な決断は、少なくとも24時間は待つべきだ。
すべてのことをすぐに解決しなきゃいけないわけじゃない
こう言う人もいるかもしれない:事態が起きてしまったのに、慌てないわけがない?待っていられるわけがない?
解決しなくていいと言っているのではない。
言いたいのは——一番混乱しているときに解決しようとするな、ということだ。
救急外来に行ったとき、医者がどんなに急いでも、まず検査をして、診断を下してから薬を出すものだ。
いきなり手術を始める医者なんていない。
なぜか?状況を把握しないまま手をつけるのは、命を危険にさらす行為だからだ。
人生も同じだ。
急ぐべきは問題を解決することではなく、まず自分を落ち着かせることだ。
落ち着いてこそ、問題をはっきり見つめられる;
はっきり見えてこそ、解決法を見つけられる;
正しい解決法を見つけてこそ、問題は本当に解決できる。
この順番は乱してはいけない。
初六が私たちに教えてくれること
坎卦の初六は、坎卦の最初の爻であり、一番危険な爻でもある。
危険な状況に入ったばかりで何もわからず、一番過ちを犯しやすいからだ。
だがこの爻が凶なのは、穴が深いからではなく、「失道」——進むべき方向を見失うからだ。
逆に考えれば:道を見失わず、むやみに動かなければ、落とし穴の中にいても、それほどひどい目には遭わない。
だから、もし今あなたが嫌なことに遭ったばかりで、ひどく慌てているなら:
まず急がないで。
まず呼吸して。
まず状況を把握して。
まず急いで決断しないで。
落とし穴に落ちるのは怖くない。混乱するのが怖いのだ。
落ち着けば、あなたは最初の一歩で勝ったことになる。