小畜卦六四:お金持ちになったのに不安が増すのはなぜ
小畜卦の四爻には「有孚,血去惕出,无咎(まことあり、あやまちを去りておそれを出ず、咎なし)」とある。蓄えがある程度増えるとリスクも伴うが、警戒心を保ち誠実さを守れば成果を守れる。本稿は資産形成・防衛の視点から六四の守成の知恵を読み解く。
こんな経験をしたことはありませんか?
お金がないときは、頭の中が「どうやって稼ごう」でいっぱい。実際に稼げるようになると、少しは楽になるかと思いきや、逆に不安が増してしまう——そんなことってありますよね。
銀行に預けても金利は低いし、投資に回せば損するのが怖い。マイホームを買えば値下がりが心配だし、株を買えば塩漬けになるのが怖い。毎日口座の数字を気にして、上がれば10分だけ嬉しくて、下がれば一日中落ち込む。
不思議だと思いませんか——お金がないときも不安なのに、お金があるとさらに不安になる。そもそも私たちは何のために稼いでいるのでしょう?
この問いに、『易経(えきけい)』風天小畜(ふうてんしょうちく)の四爻(しこう)が答えをくれます。それは「有孚,血去惕出,无咎(ゆうふ、けつきょてきしゅつ、とがなし)」という言葉です。
有孚——清く稼いだお金なら、ぐっすり眠れる
「有孚」とはどういう意味でしょう?「孚」は誠実さ、信用、頼もしさのこと。つまり「有孚」とは「信用があり、誠実で、正しい道を歩む」ということです。
六四(りくし)は風天小畜の四爻で、陰爻(いんこう)が陰位(いんい)にあり、位置はかなり高くなっています。「小畜」——つまり少しずつ蓄える段階の中でも、六四になるとすでに多少の蓄えができている——お金もあれば、資源も人脈もある状態です。
でも爻辞(こうじ)は最初に「儲かったね」「おめでとう」とは言わず、まず「有孚」と語っています。
なぜでしょう?それは、人は多少の蓄えができると、一番陥りやすい過ちが「近道を探す、小手先の技を使う、すぐに稼ごうとする」ことだからです。
「元手があるんだから、“高リターン”のことをしたほうがいい」なんて思ってしまう。インサイダー情報だの、絶対儲かる話だの、流行りの事業だの——聞けば心が動きます。「これって本当に大丈夫かな?」と疑問に思いつつも、リターンのことを考えると「富とは危険の中に求めるものだ」と自分に言い聞かせてしまう。
結果はどうでしょう?半生かけて苦労して貯めたお金が、あっという間に消えてしまう人は少なくありません。稼ぎが少ないからではなく、欲張りすぎるからです。
ウェン老師(ろうし)はよくこう言います。「お金というものは、稼いだ方法と同じ方法で失うものだ。運で稼いだお金は、遅かれ早かれ実力のなさで損する。邪な道で稼いだお金は、邪な道から消えていく。正しい道で、自分の力で稼いだお金だけが、守り抜ける」と。
「有孚」はまさにその意味です——あなたの蓄えは、誠実さの上に成り立っていなければならない。稼ぐお金の一分一厘はすべて、自分に値するもので、自分の能力と努力、正しい道で得たものであるべきだ。そんなお金なら、夜もぐっすり眠れます。
血去惕出——お金を持ったとき、本当のリスクが始まる
「血去惕出」とはどういう意味でしょう?「血」は傷つくこと、損失を被ること。「惕」は警戒すること、用心深くいることです。
つまり合わせると——「損失を避け、警戒心を保てば、大きな問題は起こらない」ということです。
多くの人は「蓄える」というと、ひたすら増やし続け、稼ぎ続け、上に上がり続けることだと思っています。でも実は違います。蓄えがある程度まで増えたら、「増やす」より「守る」ほうが大切になるのです。
なぜでしょう?何も持っていないときは、失うものなんてないから、最悪またゼロからやり直せばいい。でも蓄えができると、「埋没費用」が生まれる——もう負けられなくなるのです。
ゲームに例えると、最初は装備もないから、死んでもまた復活すればいい。でもレベルが最大になって、最強の装備を身に着けると、簡単には戦いに行けなくなる——万が一装備が壊れたら、心痛くてたまらないからです。
六四の位置はまさにそんな状態です。すでに多少の蓄えがあるのだから、初九(しょきゅう)のように無謀に突き進んではいけない。初九は失敗してもコストが低いから試せるけれど、六四は失敗の代償が大きいからです。
だから「血去」——まず「どうやってもっと稼ぐか」を考える前に、「どうやって損しないか」を考える。リスクを抑え、傷つく確率を最小限にするのです。
そして「惕出」——警戒心を保ち、有頂天にならない。少しお金を持つと調子に乗って、「自分はすごい」「何でもできる」と思い込む人が少なくありません。結果はどうでしょう?一度転げ落ちたら、何年もかけて蓄えたものがすべて消えて