大過卦九二:常識破りで事が成る「枯楊生稊」——老木に新芽が吹く
普通の道が行き詰まったら、どうする?多くの人は古い道をもっと頑張って進もうとする。でも沢風大過の九二が教えてくれるのは、非常時には非常な手段を用いること。常識を打ち破り、逆の道を行くことで新しい道が開けることもある。「枯楊生稊(かれたヤナギに若芽が生える)」、老木にも新芽が吹くことがあるのだ。
「老木に芽吹く」という言葉がある。
普通に考えれば、木は老いれば枯れ、枯れれば死ぬものだ。だが時折、もう死んだように見える老木が、突然根元から新芽を吹き出すことがある。
これはまさに、大過卦の九二が説く「枯楊生稊(こようしょうてい)、老夫得其女妻(ろうふそのにょさいをえる)、無不利(ふりなし)」のことだ。
枯れた楊の木に新芽が生え、老人が若い妻をめとる——何の不都合もない、という意味だ。
聞いただけではちょっと突飛に思えるだろう?だがこの爻は、大過卦の中でも最も知恵に満ちた一爻なのだ。
なぜ「普通のやり方」ではうまくいかなくなるのか
大過卦のテーマは「過度」——プレッシャーが大きすぎる、負荷が重すぎる、事態が常識の範囲を超えている、ということだ。
事態が常識を超えたとき、常識的なやり方は通用しなくなる。
例えば:
- 業績が下落した会社の場合、普通なら「開源節流(収入を増やし支出を減らす)」——商品をたくさん売り、経費を削減する——のが常道だ。だが業界自体が縮小しているなら、どれだけ収入を増やそうとしても限界があるし、どれだけ経費を削ろうとも限界が来る。
- 仕事がうまくいかない人の場合、普通なら「もっと頑張る」——残業したり勉強したりして自分を高める——のが常道だ。だがそもそも方向性が間違っているなら、頑張れば頑張るほど、間違った方向に進んでしまう。
- 人間関係に問題が生じた場合、普通なら「よく話し合う」——腰を据えて話し、お互いを理解する——のが常道だ。だが根本的な問題が「二人が合わないこと」にあるなら、どれだけ話し合っても無駄だ。
常識的なやり方が通用するのは、常識的な状況だけだ。
非常事態には、常識的なやり方は役に立たないどころか、状況を悪化させてしまうことさえある。
多くの人が「頑張れば頑張るほど疲れ、もがけばもがくほど深みにはまる」のは、常識的な考え方で非常事態の問題を解決しようとしているからだ。
「枯楊生稊」の三つの意味
「枯楊生稊」という四字は、聞いただけでは単純に思えるが、実は三つの意味が込められている。
一つ目:年齢の制限を打ち破る
枯れた楊の木は、普通ならもう芽吹かないはずだ。だが実際に芽吹くことがある。
これは人間にも当てはまる——周りが「もう無理だ」と思っている人でも、
- 40歳で転職?遅すぎるよ
- 50歳で起業?もうやめとけ
- 60歳で新しいことを学ぶ?もう覚えられないよ
と言われるような時期に、新しく始めて、しかも見事にやってのける人がいる。
なぜだろう?「何歳で何をすべき」という固定観念に縛られていないからだ。
木が枯れているかどうかは、皮ではなく根を見る。人がやれるかどうかは、年齢ではなく心を見る。
二つ目:経験の制限を打ち破る
「老夫得其女妻」——老人が若い妻をめとる、という言葉。
現代の感覚ではちょっと問題があるように聞こえるかもしれないが、これは「年の差婚を勧めている」のではなく、「常識的な組み合わせを打ち破ることで、新たな可能性が生まれる」という意味なのだ。
ベテランの専門家が、新卒の若者と協力したら、何が起こるだろう?
常識的に考えれば「若者に何がわかる?」と思うかもしれない。だが実際には、多くのイノベーションがこうした組み合わせから生まれている——
- ベテランには経験があり、新人には勢いがある
- ベテランは業界を知っており、新人は新しい技術を知っている
- ベテランは「どの落とし穴にはまってはいけないか」を知っており、新人は「どの道がまだ誰にも歩かれていないか」を知っている
「釣り合わない」と思われる二人が組むことで、かえって大きなことを成し遂げられることがある。
経験は財産だが、同時に足かせにもなる。
時には「常識を知らない」人に、常識を打ち破る手伝いをしてもらう必要があるのだ。
三つ目:根っこから答えを探す
「稊(てい)」とは何か?楊の木の根元から生える新芽のことだ。
枝から生えるのではなく、根元から生える。
これは何を意味しているのだろう?
木の枝が全部枯れてしまったとき、枝に水をやっても無駄だ。根元に戻らなければならない。
人間も同じだ。物事が行き詰まったとき、同じレベルで答えを探してもダメ——根元に戻らなければならない。
- 商品が売れないなら、ただ販促方法を考えるのではなく、「ユーザーのニーズ」という根っこに立ち返って考える
- 仕事にやる気が出ないなら、ただ「気合を入れる」方法を考えるのではなく、「そもそもなぜこの仕事をしているのか」という根っこに立ち返って考える
- 人間関係に問題が生じたなら、ただ「どちらが正しいか」を考えるのではなく、「そもそもなぜ二人は一緒にいるのか」という根っこに立ち返って考える
根っこが生きていれば、木全体が生き返る。
「枯楊生稊」の考え方で打開するには
理屈はわかった、では具体的にどうすればいい?三つの方法がある。
方法一:逆に考える
問題にぶつかったとき、まず「普通ならどうするか」を考えるのではなく、「逆にやったらどうなるか」を考えてみよう。
みんなが「頑張れ」と言うとき、「頑張らなくても結果が出る方法はないか?」と考えてみる。
みんなが「続けろ」と言うとき、「やめたほうがいいのでは?」と考えてみる。
みんなが「速くやれ」と言うとき、「ゆっくりやったほうが効果的なのでは?」と考えてみる。
逆に考えることが毎回正しいとは限らないが、思考の習慣を打ち破る助けになる。
良いアイデアの多くは、「逆に考えてみよう」から始まるものだ。
方法二:異業種から答えを探す
自分の業界で解決できない問題は、ほかの業界に答えを探しに行こう。
飲食業で壁にぶつかったら、小売業のやり方を見てみる。
教育業で壁にぶつかったら、ゲーム業界のやり方を見てみる。
医療業で壁にぶつかったら、インターネット業界のやり方を見てみる。
多くの破壊的イノベーションは、業界の人間ではなく、部外者が飛び込んできて生み出している。
なぜだろう?部外者はその業界の「常識」を知らないから、常識に縛られないのだ。
常識に縛られないからこそ、新しい常識を作れるのだ。
方法三:起点に戻る
どうしようもなく行き詰まったときは、一番最初に出発した場所に戻ってみよう。
考えてみてほしい:
- そもそもなぜこのことを始めたのか?
- 一番最初はどんな問題を解決したかったのか?
- 一番最初の自分はどんなだったか?
多くの場合、歩いているうちに「何のために出発したのか」を忘れてしまう。起点に戻れば、答えはずっとそこにあったんだ、と気づくはずだ。
遠くまで来てしまったときは、忘れずに根っこを見に戻ろう。
九二が私たちに教えてくれること
大過卦の九二は、陽爻が柔らかい位にある——力強い人だが、立場は弱い、という状態だ。
普通ならこれは良くないはずだ。だが九二の結果は「無不利」——何の不都合もない、となっている。
なぜだろう?臨機応変に対応できるからだ。
今が非常時期であることを知っていて、常識的なやり方にこだわらない。体裁にこだわらず、常識を打ち破り、一からやり直す覚悟がある。
だから枯れた木でも、新芽を吹かせられる。
だから年を重ねた人でも、新しいことができる。
あなたを本当に縛り付けているのは、年齢でも環境でも、他人の目でもない。
自分の頭の中にある「普通」という概念だ。
それを打ち破れば、あなたは生き返る。