風天小畜の九二:なぜ上を向いて進むほど苦しくなるのか
小畜卦の二爻には「牽復、吉(けんふく、きち)」とある。積み重ねが一定段階に達すると壁にぶつかり、一人では進めなくなる時が来る。そんな時こそ「牽復」、つまり仲間を見つけて共に歩み、力を借りて前へ進み、互いに支え合って遅れないようにする知恵が必要だ。本稿では仕事の上昇期とチーム協働の視点から、九二の「力を借りる知恵」を読み解く。
こんな経験、ないだろうか?
何かを始めたばかりの頃は、すごく上達が早い。新しいスキルを学べば最初の1ヶ月でめきめき伸びるし、新規プロジェクトなら最初の3ヶ月で成績がグングン上がる。営業なら、始めたばかりの頃は顧客がすごい勢いで増えたりする。
だけど、進めば進むほど、しんどくなってくる。
同じだけ努力しても、効果がどんどん薄れていく。前はちょっと頑張れば一段階上れたのに、今は必死になってもほんの少ししか前に進めない。不安になってくる——「自分の能力もここが限界?」「この仕事、これ以上は無理?」って。
慌てなくていい。
それはあなたが能力不足なんじゃない。風天小畜(ふうてんしょうちく)の二爻(にこう)の段階に来ただけのこと——一人では蓄積が進まなくなったから、誰かと一緒に積み上げるべき時なんだ。
この爻の言葉はこうだ:「牽復(けんぷく)、吉(きち)」
牽復——一人だと早く歩けるけど、みんなだと遠くまで行ける
「牽復」ってどういう意味だろう?「牽」は引っ張る、手を引く、互いにつながるということ。「復」は正しい道に戻って、前に進み続けるという意味。
合わせると——互いに手を引き合い、支え合いながら一緒に前に進むのが、一番いいってことだ。
初九(しょきゅう)の頃は、一人で進んでも問題なかった。始めたばかりは内容も単純で難易度も低いから、自分一人で頑張ればどうにかなった。だけど九二(きゅうじ)になると、状況が変わってくる。ある程度積み重ねて、壁にぶつかる。ここで一人で無理して進もうとすると、しんどくなるばかり。
どうして?だって上に行けば行くほど、必要な能力が多様になるから。
個人でメディアを始めたばかりの頃は、文案を書いて、動画を撮って、編集して、投稿する——全部一人でできた。だけどある程度規模が大きくなると、一人では手が回らなくなる。文案は上手くても、運用は苦手かもしれない。動画撮影は得意でも、収益化はできないかもしれない。
そんな時どうする?一人で頑張り通す?無理がある。諦める?そんなの嫌だ。
九二は教えてくれている——「牽復」しなさい、って。一人で無理して踏ん張らないで、一緒に歩いてくれる人を探しなさい。自分が得意なことは自分がやって、相手が得意なことは相手に任せる。二人で組めば、一人で必死に頑張るよりずっといい。
ウェン老師(Wen Laoshi)がよく言っている:「全部自分でやろうとしたら、最後に何も大きくできない」。一人の能力も時間も精力も限られている。何もかもできるようになんて、絶対になれない。人と協力すること、人の力を借りること、人を「牽いて」一緒に歩くことを覚えるのが、物事を大きくする鍵なんだ。
どうして上に行くほどしんどくなるのか
この道理が分からない人は多い。「自分の力でここまで来たんだから、これからも自分の力でもっと遠くまで行ける」と思っている。
それは違う。
今日まで来られたのは、あなたの能力のおかげ。明日にたどり着けるかどうかは、他の人の能力を使えるかどうかにかかっている。
こういう例は本当によく見る。営業がすごく得意な人が、課長に昇進した途端に上手くいかなくなる。どうして?営業は自分の力で成果を出す仕事だけど、課長は他の人の力を使って成果を出す仕事だから。自分一人で仕事をするのは得意でも、人を育てたりまとめたりするのは苦手。だから昇進したら逆にくたくたになるし、成果も出ない。
起業家にも同じような人がいる。社員が自分一人の時はすごく上手くいってたのに、人を雇って規模を大きくした途端に問題が出てくる。どうして?全部自分でやるのが癖になっていて、人に任せるのが不安だから。結局、自分はくたくたになるし、社員はやることがなくて手持ち無沙汰。会社の効率はすごく悪くなる。
これが「牽復」の知恵を持っていない状態だ。九二の段階に来ているのに、まだ初九のやり方——一人で黙々と仕事をする——で進めている。初九の方法はスタートダッシュにはいいけど、遠くまで行くことはできない。
九二になったら、考え方を切り替えなきゃいけない——「自分一人でやる」から「みんなで一緒にやる」にね。
「牽復」は適当に引っ張ればいいってものじゃない
「牽復」は簡単に聞こえるけど、適当に誰かを引っ張ればいいってものじゃない。正しい人を選べば事半功倍(半分の努力で倍の成果)だけど、間違った人を選んだら事倍功半(倍の努力で半分の成果)になるし、最悪あなたまで道連れにされる。
じゃあ、どんな人が「牽く」価値のある人なのだろう?
第一に、価値観が一致していること。二人が同じことに賛同して、同じ方向に向かっていなきゃダメ。じゃないと、あなたは東に行きたいのに相手は西に行きたい——引っ張り合いになって、どっちも遠くまで行けない。
第二に、能力が補い合えること。相手ができることがあなたはできなくて、あなたができることが相手はできない——そうじゃないと協力する意味がない。二人の能力が全く同じだったら、1+1が1のままだから、組む必要がない。最高のパートナーは——あなたの長所が長くて、相手の長所がちょうどあなたの短所を補える人だ。
第三に、人柄が信頼できること。これが一番大事。能力が足りないなら学べばいいけど、人柄がダメならそれは時限爆弾だ。人柄の悪い人を牽いたら、最後にはあなたが裏切られても気づかない。
知り合いの共同経営者のカップルがいる。一人は技術出身で、もう一人は営業出身だ。技術の方は口下手だけど、仕事はすごく丁寧で確実。営業の方はコードは書けないけど、人付き合いがすごく上手。二人が組んで、技術担当がプロダクトを受け持ち、営業担当がマーケットを受け持ったら、息がぴったり合って会社はすごく順調になった。
ほら、これが「牽復」の典型だよ——あなたが私を引っ張って、私があなたを引っ張って、一緒に前に進む。一人じゃできないことも、二人ならできるようになる。
風天小畜の九二からの三つの提醒
いろいろ話したけど、九二の爻は結局私たちに何を教えてくれているのだろう?
第一に、一人では歩けなくなったら、無理して踏ん張らないこと。誰かと一緒に歩くのは、恥ずかしいことじゃない。能力がないからじゃなくて、知恵があるってことだ。一人の力には限りがある。人の力を借りることを覚えてこそ、もっと遠くまで行ける。
第二に、人を探すなら正しい人を探すこと。誰でも「牽けばいい」ってものじゃない。価値観が合わない人は付き合わない、能力が重複する人は組む必要がない、人柄がダメな人は距離を置く。数より質を重視しよう。間違った人と組むくらいなら、一人でやった方がマシだ。
第三に、「牽く」のは相互のもので、一方的なものじゃないこと。相手に助けてほしいなら、あなたも相手を助けられなきゃダメ。協力の本質は価値の交換だ。あなたに価値があるからこそ、相手もあなたと手を組みたいと思ってくれる。だから人を探す前に、まず自分自身の価値を磨いておこう。
風天小畜が九二になると、「自分一人で蓄える」段階から「みんなで一緒に蓄える」段階に変わる。
初九の頃は、一人で黙々と仕事をして、誰にも邪魔されずにどんどん上達した——それはあなたのスタート期だった。九二になって壁にぶつかり、一人ではどうにもならなくなったら、人と組むこと、人の力を借りること、みんなで支え合うことを覚えなきゃいけない。
これは後退じゃなくて、前進だ。だってあなたは気づいたんだから——自分は全能じゃない、他の人が必要なんだって。
自分の不得意なところを認めて、得意な人と一緒に仕事をする——それが本当に「できる人」ってものだ。
九二の言葉の通り——「牽復、吉」。
一人だと早く歩けるけど、みんなだと遠くまで行けるんだ。