小畜卦九五:チームが頑張っても成果が出ない理由とは
小畜卦の五爻には「有孚挛如,富以其隣」(誠実に心を結び、隣人と共に富む)とある。リーダーシップの段階まで成長したら、自分一人が優秀なだけでは不十分で、周囲を巻き込んで共に成長する必要がある。誠実さで人をまとめ、みんなで豊かになるのが本当の富だ。本稿ではチームマネジメントの視点から、九五の共に栄える智慧を読み解く。
あなたが経営者や管理者なら、こんな悩みを抱えたことがあるかもしれない。
毎日朝早く出て夜遅く帰り、誰よりも必死に働いている。能力も高いし、目利きもできるし、仕事も速くて丁寧。だけど、あなたのチームはどうだろう?一向にあなたのペースについてこない。あなたは慌てて右往左往するのに、部下はいつも一拍遅れる。
「彼らは努力していない」と言えばそうでもない——毎日遅くまで残業している。だけど「役に立っているか」と言われれば、あまり役に立っていないように思える。ミスは減らないし、仕事は滞る。あなたはまるで大きな車を一人で引っ張っているような気分になる。他の人も後ろから押してはいるけど、押す方向がバラバラなんだ。
疲れる。本当に疲れる。
一人で疲れるだけならまだいい。問題は——疲れた割に結果が出ないことだ。チームの業績が上がらないのは人のせいだと思って、メンバーを入れ替えてみる。だけど入れ替えても、状況はあまり変わらない。
いったい何が問題なんだろう?
『易経』の風天小畜の五爻が、まさにこのことを語っている。その言葉は:「有孚挛如,富以其邻(ゆうふれんにょ、とみをもってそのとなりにおよぼす)」
有孚挛如——まず人に信頼されてこそ、人はついてくる
「有孚挛如」とはどういう意味だろう?「孚」は誠実、信頼できるということ。「挛」は手をつなぎ、一つにつながり、心を一つにするという意味だ。
合わせると——誠実さでみんなをまとめ上げ、手を取り合って前に進むということだ。
九五は風天小畜の五爻で、陽爻が陽位にあり、中を得て当位している、卦全体の主役となる爻だ。九五の位置にいるということは、もう一人で戦っているのではない——あなたはリーダーであり、チームやプロジェクトを率いて、多くの人を連れて前に進む立場だ。
だけど多くの人が抱える問題は——自分自身は優秀だけど、人を率いることができないということだ。
なぜ率いられないのか?「自分が優秀なんだから、みんなは私の言うことを聞いていればいい」と思っているからだ。だけど実際のところ、命令するだけの人にずっとついていきたいと思う人なんていない。あなたがどれだけ能力が高くても、人は心の底では納得していない。表面上は言うことを聞いても、裏ではそれぞれ好き勝手にやっている。
これが「有孚」できていない状態だ。「有孚」とは何か?あなたが信頼に値し、言葉に責任を持ち、みんなのことを考えているということだ。あなたに「有孚」があってこそ、みんなは「挛如」——手を取り合い、心を一つにして一緒にやろうと思ってくれる。
ウェン老師はよくこう言う:リーダーシップとは「私があなたより優秀だ」ということではなく、「私についてくればあなたはもっと良くなれる」ということだ。 あなたがどれだけ優秀でも、他人に関係がなければ、なぜ人はあなたについていくだろう?あなたが優秀で、しかも周りの人まで良くしてあげられるからこそ、みんなはついてきてくれる。
「挛如」という言葉は面白い——あなたが人に「ついてこい」と命令するのではなく、みんなが自発的に手をつなぎ、一つにつながる状態のことだ。権力ではなく、信頼と魅力で成り立つ。
富以其邻——どれだけの人を良くできるかで、あなたの行ける距離が決まる
「富以其邻」とはどういう意味だろう?「富」は豊かになる、豊かになる、強くなるということ。「以其邻」は、隣人や周りの人も一緒に、という意味だ。
合わせると——自分だけが豊かになるのではなく、周りの人も一緒に豊かにする;自分だけが強くなるのではなく、身近な人も一緒に強くするということだ。
多くの人は「蓄積」について誤解している。「蓄積=自分でモノを貯める、自分が優秀になる、自分が稼ぐ」と思っている。九五は教えてくれる——それは違う、と。ある段階までくれば、あなたの蓄積は「自分がどれだけ持っているか」ではなく、「どれだけの人を引っ張っていけるか」で測るものなんだ。
なぜか?一人の能力には限りがあるからだ。どれだけ優秀でも、一日は24時間しかないし、できる仕事の量には限りがある。だけどもし10人、100人を引っ張れるようになれば、あなたの能力は10倍、100倍に広がる。
これが「富以其邻」の根底にある考え方だ——他人を成し遂げることで、より大きな自分を成し遂げる。
例えばこうだ。一人のトップセールスマンが、自分一人で月に100万の業績を上げられるとしたら、すでにすごいことだ。だけどもし彼が自分のやり方を10人のセールスに教えて、それぞれが月に50万ずつ稼げるようになれば、チーム全体では月に500万になる。自分自身の業績は下がるかもしれないけど、全体の規模は大きくなる。
これが「個人プレイヤー」から「チームリーダー」への転換だ。多くの人はこの考え方に切り替えられない——「自分でやったほうが速いし上手い、他人に任せると遅いし手間がかかる、自分でやったほうがいい」と思ってしまう。
だけど自分でやっている限り、あなたはずっと「大きなセールスマン」のままだ。みんなを率いてやってこそ、あなたは管理者になれる。視野の大きさが違えば、到達できる上限も違ってくる。
ウェン老師はこんな言葉を残している:小さな富は自分一人で得られるが、大きな富は多くの人の力で得られる。どれだけの人を良くできるかで、あなたの成し遂げられることの大きさが決まる。
なぜあなたのチームは頑張っても結果が出ないのか
最初の疑問に立ち返ろう——なぜチームの一人ひとりは頑張っているのに、結果が出ないんだろう?
ほとんどの場合、みんなの「頑張り」が一つにまとまっていないからだ。
あなたにはあなたの方向があり、彼には彼の考えがある;あなたは東へ力を入れるのに、彼は西へ力を入れる。一見一人ひとりが忙しそうに見えても、全体の合力は小さい。むしろマイナスになることさえある——みんなが足を引っ張り合っているからだ。
これが「挛如」できていない結果だ。
良いチームというのは、一人ひとりが優秀なのではなく、みんなの力が同じ方向に向いているチームのことだ。車と同じで、四つのタイヤが全部同じ方向に回れば車は速く進む;四つのタイヤがバラバラに回ったら、車は進まないどころかバラバラになってしまう。
ではなぜ力が一つにまとまらないのか?
根源はリーダーにある。
リーダーであるあなたは、方向をはっきり伝えられているだろうか?「私たちはどこへ行くのか、なぜそこへ行くのか、そこへ行ったら彼にどんなメリットがあるのか」を、一人ひとりに理解させられているだろうか?
信頼を築けているだろうか?みんなはあなたの言葉を信じているだろうか?あなたについていけば結果が出ると信じているだろうか?あなたが彼らを裏切らないと信じているだろうか?
「富以其邻」の視野を持っているだろうか?自分だけが出世して稼げればいいと思っているのか、それとも本気でみんなを連れて良くなりたいと思っているのか?
これらの問いにはっきり答えられるようになれば、チームの力は自然と一つにまとまる。答えが見つからない限り、どれだけ急かしたり、監視したり、メンバーを入れ替えたりしても無駄だ。
九五が教える、チームを率いる三つの心得
風天小畜の九五の知恵は、突き詰めれば一つの問いに行き着く:あなたは自分一人がすごいのか、それとも他人を連れて一緒にすごくなれるのか?
「自分一人がすごい」から「みんなを連れてすごくなる」へステップアップするには?三つの参考方向を紹介しよう。
一つ目:「有孚」を何よりも優先する。
チームを率いるなら、まず信頼を築くことだ。
どうやって信頼を築く?スローガンを叫んだり、絵に描いた餅を見せたりするんじゃない。言ったことを守ることだ。口にしたことは責任を持つ;約束したことは必ず果たす;自分で決めたルールは、まず自分が守る。
あなたが信頼できる人になれば、チームはあなたを信じる;チームがあなたを信じてくれれば、ついてきてくれる。信頼というのは、築くのに時間がかかるけど、壊すのはあっという間だ。一度でも約束を破れば、それまで積み上げた信頼は全部台無しになる。
だから軽々しく約束してはいけない。約束したら必ず守る。約束を少なくして多く果たすほうが、たくさん約束して少ししか果たさないよりずっといい。
二つ目:「富以其邻」の考え方を身につける。
自分の業績、自分の成長、自分の利益ばかりに目を向けないでほしい。もっとこう考えてみよう——「チームの一人ひとりをどう成長させてあげられるか?」「みんなが稼げて、キャリアアップできるようにするにはどうしたらいいか?」
こんな不安を抱くかもしれない——「彼らが優秀になったら、私を追い越すんじゃないか?」「どこかへ行ってしまうんじゃないか?」
そういう可能性はゼロではない。だけど知っておいてほしい——あなたがどれだけ優秀な人を育てられるかが、あなたの到達できる高さを決める。あなたが育てた人がみんな普通なら、あなたも普通だということ;あなたが育てた人がみんな優秀なら、あなたはそれ以上に優秀だということだ。
それに、本当に優秀な人は、あなたが引き止めてもどこかへ行ってしまうものだ。あなたにできるのは、彼があなたのチームにいる間に、もっと良くなってもらうことだ。彼が良くなれば、あなたのチームも良くなる;彼が去ったとしても、あなたの恩義を覚えていてくれる。これはWin-Winの関係だ。
三つ目:「挛如」の状態を目指す。
良いチームとは何か?みんなが同じ方向を向き、同じところに力を入れ、まるで一人の人間のように動けるチームのことだ。
どうやって実現する?制度でもKPIでもない。共通認識だ。目標についての共通認識、価値観についての共通認識、仕事の進め方についての共通認識。共通認識があれば、あなたが急かさなくても、みんな自分から前に進んでいく。
共通認識を築くのは一朝一夕にはいかない。何度も伝え、何度も実践し、何度も強化していく必要がある。だけど一度築き上げてしまえば、その力は無限大だ。
風天小畜の九五の位置にいるということは、すでに小さな成功を収めている状態だ。だけど九五の知恵は教えてくれる——それだけではまだ足りない、と。
自分一人が優秀なのは、あくまでスタートライン。周りの人を連れて一緒に優秀になれてこそ、本当の蓄積だ。
一人だけの豊かさは、小さな豊かさ。大勢の豊かさこそ、大きな豊かさ。
一人だけの強さは、小さな強さ。大勢の強さこそ、本当の強さ。
まさに九五の言葉の通り——「有孚挛如,富以其邻(ゆうふれんにょ、とみをもってそのとなりにおよぼす)」。
信頼で人をまとめ、Win-Winで人を成し遂げる。
どれだけの人を照らせるかで、あなたの行ける距離が決まる。