起業のタイミングは?水雷屯の初九「潜竜勿用」が教える:まず生き残れ
起業初期に陥りがちな過ちは何か?能力不足ではなく、焦りすぎることだ。水雷屯の初九には「磐桓、利居貞、利建侯」(岩のように動かず、正しく居れば吉、侯を立てるに吉)とあり、何事も最初は困難で、急いで拡大せず足場を固め、チームを整えるのが正道だ。本稿では起業スタート・新職場適応・副業開始の3場面を解説する。
起業のタイミングは来ているのか?これが最近、私が一番多く聞かれる質問だ。
会社を辞めて起業しようとしている人、副業を本業にしようとしている人、起業して3ヶ月で規模を拡大しようとしている人。誰もが焦っていて、トレンドの波に乗り遅れるのが怖い、他の人に先を越されるのが怖いと思っている。
私はいつも逆に聞くようにしている。「今のあなたは、あとどれくらい生きられる?」って。
どういう意味かって?手元のお金で、あと何ヶ月持ちこたえられる?そのビジネスは、拡大しなくても自分で回せる?そのチームは、あなたがいなくても回る?ってことだ。
答えられない人が多い。
答えられなくて当然だ。答えられないときこそ、**屯卦初九**を見るべきなんだ。
屯卦初九とは何か
屯卦の初爻の爻辞は、6文字に半文足したものだ:**磐桓,利居贞,利建侯。**
堅苦しく聞こえるから、わかりやすく言い換えよう。
磐桓とは、うろうろしたり、足踏みしたり、その場で回ったりすること。前に進みたいけど進めなくて、その場を行ったり来たりしている馬を想像してみれば、あの状態のことだ。
利居貞とは、正しい道を守り、態勢を安定させるのが吉だということ。むやみに動かないほうがいい、動くとかえってよくない。
利建侯とは、この時期は戦いに出たり拡大したりするより、チームを組んだり、仲間を集めたり、パートナーを探したりするのに一番適しているということだ。
なぜ初九はこの状態なのか?
屯卦は万物が生まれたばかりの卦で、初九は生まれたばかりの中のさらに最初の段階だからだ。陽の力は強いけれど、一番下にいて、目の前には坎水(険)がある。動けばすぐに落とし穴にはまってしまう。
力があっても無駄だ。タイミングが悪いんだ。
種が芽吹いたばかりのとき、いきなり直射日光に当てちゃダメだ。2日もすればしおれてしまう。まず土の中で根を張らせて、根が深くなってから、ゆっくり上に伸ばしていくものだ。
起業も同じ道理だ。
起業初期の最大の落とし穴:生き残れていないのに大きくしようとすること
同じところで失敗する起業家を、私は数え切れないほど見てきた——スタートダッシュが勢い込みすぎている、ってことだ。
ある友達がいた。大企業の役員をしていて、貯金もあったから起業した。プロジェクトを立ち上げたばかりなのに、まず500平米のオフィスを借りた。全面ガラス張りの、あれだ。20人以上採用して、ディレクターだマネージャーだチーフだと、役職もはっきりさせた。「起業するには、起業らしい体裁が必要だ」って彼は言ってた。
彼の会社を一度見学に行ったことがある。立派なのは本当に立派だったけど、余ってるのも本当に余ってた。半分の人はスマホをいじり、半分の人は会議をしていた。
私は彼に聞いた。「プロダクトはできたの?」
彼は「まだブラッシュアップしてるところだ」って答えた。
私はまた聞いた。「顧客はいるの?」
彼は「数社と交渉中だ」って。
私は「じゃあ、なんでそんなに大きなオフィスを借りたの?」って聞いた。
彼は「視野を広く持たなきゃ。チームも整えておかないと、業務が軌道に乗ってからじゃ間に合わない」って言ってた。
結果はどうなったか?プロダクトがリリースされる前に、資金が底をついた。会社は8ヶ月持って、閉鎖した。
これが典型的な——歩けるようになってもいないのに、マラソンを走ろうとするパターンだ。
**屯卦初九**が「磐桓」と言っているのは、ゴロゴロするなという意味じゃない。体裁を整えるのに急ぐな、ということだ。まず一番核心的なことを片付けろ:あなたのプロダクトは通用するのか?顧客は買ってくれるのか?そのビジネスは自分で回せるのか?
この3つが片付いていないうちは、どんな拡大も無駄な手間だ。
ウェン老師はよく言う。起業1年目の目標は、どれだけ稼ぐかじゃない、生き残ることだ、って。
1年目を生き残れば、9割の起業家に勝てるんだ。
磐桓は弱腰じゃない、スタート段階の基本的なやり方だ
多くの人は、その場で足踏みするのは時間の無駄だと思っている。
実はそうじゃない。
タカがウサギを捕まえるときを見てごらん。飛びかかる前に、何度も空を旋回する。何をしているか?地形を観察して、一番いい角度を探して、一番いいタイミングを待っているんだ。
旋回しているのは飛べないからじゃない。飛びかかるチャンスは一度きりで、外したら今日はお腹を空かせることになるって知っているからだ。
起業も同じだ。**屯卦初九**の「磐桓」は、タカが空を旋回している段階のことなんだ。
あの人は時間を無駄にしていると思うかもしれないけど、あの人は市場全体の地形を探り尽くしているんだ。
逆の例をもう一つ挙げよう。
ECをやっている女の子がいた。最初は彼女一人で、家で仕事をしていた。自分で商品を選び、自分で写真を撮り、自分でカスタマーサポートをし、自分で梱包した。一人で5人分の仕事をして、半年経った頃には毎月2、3万円安定して稼げるようになった。
そこで彼女はようやく人を採用し始めた。まずカスタマーサポートを一人雇い、次に運用担当を一人雇い、それから小さなオフィスを借りた。3年目にはチームは十数人になり、月間売上は数百万円になった。
彼女は私にこう言ってた。最初の半年が一番大変だったけど、一番重要だった、って。あの半年で全体の流れを全部把握して、お金がどこから来るのか、落とし穴はどこにあるのか、何にどれくらいお金をかけるべきかがわかったんだって。後から人を雇ったのも、本当に手が回らなくなったからで、体裁のためじゃない、って。
ほら、これが「利居貞」だ。まず正しい道を守り、まず物事を正しくやってから、大きくすることを考えるんだ。
新しい仕事、新しい副業も同じ
起業だけじゃない。新しく入社したときも、副業を始めたときも、同じ道理だ。
新しい会社に転職したばかりのとき、最初の3ヶ月はまさに屯卦初九の段階だ。この時期に一番やってはいけないのは何か?新しい役員が着任してすぐに気合を入れ直す、あの「新官上任三把火」だ。
会社の内情がどれくらい深いかも知らないのに、いきなり改革しようとしたり、自分のすごさを証明しようとしたりする。結果はどうなるか?周りの人を怒らせて、仕事もうまくいかず、最後はしょんぼり辞めていくことになる。
**屯卦初九**の知恵はこうだ:どんなに腕があっても、新しい場所に来たばかりのときは、まず身を低くしておけ。人間関係も仕事の内容も全部把握してから、動き出しても遅くない。
『象伝』にもいい言葉がある:「以貴下賎、大得民也。」
どういう意味か?どんなに身分が高くても、どんなに腕があっても、新しい環境に来たら態度を低くしなければならない。低く構えれば構えるほど、人の心を集められるんだ。
次に副業の話をしよう。
副業でまだお金も稼げていないのに、先に機材をたくさん買ったり、講座をたくさん受けたりする人が多い。ショート動画をやるなら、先に2万円のカメラを買う。自媒体をやるなら、先に1万円のトレーニングキャンプに申し込む。ライブ配信をやるなら、先に配信ルームを内装する。
モノはたくさん買ったし、お金もたくさん使ったのに、本当の仕事は数日しかやらない。
屯卦が教えてくれるのは、スタート段階で一番重要なのは装備じゃなくて、方向が合っているか、うまく回せるかどうかだ、ってことだ。
まずスマホで撮影して、バズるようになってからカメラを買っても遅くない。まず自分で記事を書いて、フォロワーが増えてから講座を受けても遅くない。
まず検証して、次に投入する。まず生き残って、次に発展する。
この順番は乱しちゃダメだ。
自分が初九の段階かどうかを判断する方法
簡単だ。自分に3つの質問をしてみればいい。
1つ目の質問:安定した収入源はあるか?
起業でも副業でも、安定した収入があるなら、その事業は成立しているということだ。まだないなら、まだ初九の段階で、まだ磐桓の状態だということだ。
2つ目の質問:核心的な問題がどこにあるかわかっているか?
起業で一番やってはいけないのは、何もわからないまま進むことだ。今一番大きな問題はプロダクトがダメなのか、顧客が足りないのか、チームがついてこれないのか、わかっていなきゃいけない。問題がどこにあるかもわからないのに、何を突っ走っているの?
3つ目の質問:手元のお金はあとどれくらい持つか?
これが一番現実的だ。6ヶ月分を切っているなら、拡大のことは考えるな。しっかりコストを抑えて、キャッシュフローを管理しろ。
3つの質問にどれも答えられないなら、間違いなく初九の段階だ。
初九の段階なら、初九がやるべきことをやれ。磐桓、居貞、建侯だ。
急ぐな。
最後に一言
今の時代、みんな焦っているのはわかる。
他の人が起業で成功したり、副業で月収1万円を超えたり、以前は自分より劣っていたと思っていた人が伸びてきたりするのを見ると、不安になるよね。
でも知っておいてほしい。あなたが見ているのは、みんなが飛び立った後の姿だけだ。見えていないのは、みんなが地上でどれだけ長く旋回していたか、ってことだ。
**屯卦初九**という爻は、物事を始めたばかりの人たちに向けられたものだ。「頑張れ」なんて声援も送らないし、「絶対大丈夫だ」なんて言いもしない。ただこう言っている——急ぐな、まず足場を固めろ、まずチームを組め、まず生き残れ。
何事も最初が難しい。
難しいのは物事自体じゃない。最初の段階を飛び越えて、いきなり中盤に行こうとするからだ。
飛び越えられるものじゃない。通るべき道は、一歩たりとも省けない。
だから次に「起業のタイミングは来てる?」と聞くときは、まずポケットの中身を確認して、次に自分のチームを見てみろ。
どちらも準備ができていないなら、もう少し待てばいい。
磐桓は弱腰じゃない。
風が吹くのを待っているんだ。