坎卦六三:どうする?進退窮まる「来之坎坎」——むやみに動かず、まずはじっとしよう
人生で一番つらいのは、前に進むことでも後ろに下がることでもなく、進退両難な状態だ。前にも後ろにも動けず、真ん中に突っかかって身動きが取れない。坎卦の六三がまさにこの状態を説いている——「来之坎坎(らいしかんかん)、険しく且つ安んず」。前後に落とし穴があり、どう動いても危険な時、どうすればいいのだろう?
こんな経験、あなたにもありませんか?
- 今の仕事はつまらないけど、辞めたらもっと良い仕事が見つかるか不安——進退両難
- 今の恋愛は続けるのが疲れるけど、別れるのも惜しい——進退両難
- Aを選んでも後悔しそう、Bを選んでも後悔しそう——進退両難
一歩前に出ても落とし穴、一歩下がっても落とし穴。
かといって、その場に立ち止まるのも嫌だ。
人生で一番辛いのは、順風満帆でも、ずっと逆境でもない。
真ん中に挟まって、動けなくなることだ。
坎卦の六三は、まさにこの状態を語っている。
「来之坎坎,险且枕」
六三の爻辞はこう言っている:「来之坎坎,险且枕。入于坎窞,勿用。」(来るも坎なり、去るも坎なり。険しくて頼るところもない。深い穴に落ちたなら、何もするな)
来るのも坎(かん)、去るのも坎。前も後も危険だらけで、どう動いても危ない。
深い穴に落ちてしまったのなら、まずは動かないことだ。
「勿用(もちいるなかれ)」——行動するな、ということ。
この言葉は易経の中でも珍しい。
易経は普通「どうするべきか」を教えてくれるもので、「するな」と言うことはめったにない。
だけど六三は教えてくれる:この時は、何もしない方が、何をするよりもマシだ、と。
なぜ進退両難になるのか
なぜ進退両難な状況に陥るのか? 大抵は3つの原因がある。
原因その1:情報が足りない
前に進んだらどうなるかも、後ろに下がったらどうなるかも、わからない。
辞めたら、もっと良い仕事が見つかるか? わからない。
辞めずに続けたら、意味があるのか? これもわからない。
情報が足りないと、人は迷いやすくなる。
どっちの選択が良いか計算できないからだ。
計算できないから、選べない。
選べないから、そこに立ち往生してしまう。
原因その2:どちらの選択にも得手と不得手がある
「片方が良くて片方が悪い」のではなく、どちらにも良い点と悪い点がある。
Aを選べばこれは手に入るけど、あれは失う。
Bを選べばあれは手に入るけど、これは失う。
どっちも惜しくて、どっちも手放せない。
だから真ん中で動けなくなって、選べない。
本当に難しい選択は、「正解か不正解か」ではなく、「どっちも良いけどどっちかを選ぶ」ことだ。
両方欲しいけど、選べるのは一つだけ。
これが一番、心を消耗させる。
原因その3:後悔するのが怖い
人がなぜ迷うのか? 選択を間違えるのが怖いからじゃない。
怖いのは——選んだ後で後悔することだ。
「もしAを選んで、後からBの方が良かったとわかったらどうしよう」
「もし後ろに下がって、前に進む方が正解だったとわかったらどうしよう」
「もし後悔したら」と思うと、動けなくなる。
真ん中で苦しむ方を選んで、後悔するかもしれない決断をするよりマシだと思ってしまう。
だけど、考えてみてほしい:
真ん中に立ち往生していること自体も、一つの選択なんだ。しかも、一番最悪の選択かもしれない。
進退両難な時、一番やってはいけないこと
六三は「勿用」——行動するな、と言っている。
だけど「勿用」は、ただボーッと生きていろという意味じゃない。
言っているのは、むやみに動くな、ということだ。
進退両難な時、人はつい3つの失敗を犯しがちだ。
失敗その1:むやみに動き回る
長く迷いすぎて、心が苦しくなる。
「ダメだ、何かしなきゃ。じゃないと苦しくてたまらない」
そして、適当に決断してしまう。
その決断が正しいからじゃなく、「何もしないよりはマシ」という気持ちからだ。
だけど考えてみてほしい、こんな状態でした決断が、まともなわけないだろ?
株で含み損を抱えて、苦しくなって損切りしちゃうようなものだ。
結果、損切りした途端に株価が上がる。
もっと苦しくなる。
不安を紛らわすためにした決断は、十中八九間違っている。
失敗その2:あちこちに意見を聞きまわる
自分で決められないから、他人に聞きに行く。
両親に聞いたり、友達に聞いたり、同僚に聞いたり、ネットの人に聞いたり。
結果はどうなる?
Aを選べと言う人もいれば、Bを選べと言う人もいる。
勇気を出せと言う人もいれば、慎重になれと言う人もいる。
聞けば聞くほど混乱するし、聞けば聞くほど訳がわからなくなる。
最終的に、結局どうしたらいいかわからないままだ。
しかも、他人の言うことがどんなに正しくても、それは他人の選択だ。
あなたの人生は、あなた自身が生きるものだ。
後悔したって、自分で背負うしかない。
失敗その3:その場でただ待ちくたびれる
どっちに進んでもダメなら、とにかく動かない。
ただダラダラと、待って、引きずる。
仕事が嫌でもダラダラ続けて、クビになるのを待つ。
恋愛が幸せじゃなくてもダラダラ続けて、二人とも感覚が麻痺するまで続ける。
体の調子が悪くても放置して、小さな病気が大きな病気になるまで放置する。
こういう「動かない」のは、六三の言う「勿用」じゃない。
六三の「勿用」は自発的な選択——まずは動かないで、状況がはっきりしてから動こう、というものだ。
ただ待ちくたびれるのは、受け身の諦め——もうダメだ、このままでいいや、というものだ。
一方は戦略で、もう一方は逃避だ。天と地ほどの差がある。
進退両難な時、正しい対処法は?
じゃあ、具体的にどうしたらいいの?
坎卦の六三は教えてくれる:まず動くな。だけど、何もしないでいるな、と。
具体的には? 3つのことをやろう。
その1:情報を集める
なぜ迷うのか? 情報が足りないからだ。
情報が足りないと、判断なんてできない。
だから、急いで選ばなくていい。
まずは状況をはっきりさせよう。
- 辞めるか迷ってる? まずは市場の状況を調べたり、履歴書を出してみたり、同業の人と話してみよう
- 別れるか迷ってる? まずはしばらく距離を置いてみて、自分が本当に一人でやっていけるか確かめてみよう
- 家を買うか迷ってる? まずは実際に見に行ったり、ローンを計算したり、買った人の感想を聞いてみよう
情報が多ければ多いほど、選択は簡単になる。
迷ってることの多くは、実は「考えすぎて、行動が足りない」だけなんだ。
実際に調べてみれば、答えは自然に見えてくる。
その2:自分が一番怖いものは何か、はっきりさせる
どちらの選択にも良い点と悪い点がある時、どう選ぶ?
「どっちが良いか」を考えるんじゃなくて、「どっちの悪い結果なら受け入れられるか」を考えよう。
Aを選んだ時、最悪の結果は何? それ、受け入れられる?
Bを選んだ時、最悪の結果は何? それ、受け入れられる?
「負けても大丈夫」と思える方を選ぼう。
良い結果なら誰だって受け入れられる。違いは、悪い結果の方だ。
どっちの悪い結果なら耐えられるか、それで選ぼう。
選択の本質は、「一番良いものを選ぶ」ことじゃない。「一番負けても大丈夫なものを選ぶ」ことだ。
それがはっきりすれば、選ぶのはそんなに難しくない。
その3:自分に期限を設ける
待ってもいいけど、ずっと待ってはいけない。
様子を見てもいいけど、一生様子を見てるわけにはいかない。
自分に期限を設けよう:
- 「あと3ヶ月様子を見て、3ヶ月後に決断しよう」
- 「あと5回トライして、ダメだったら撤退しよう」
- 「あと半年待って、半年後はどんな結果でも受け入れよう」
期限が来たら、どんな状況でも決断する。
迷ってもいいけど、無期限に迷ってはいけない。
無期限に迷う代償は、どんな間違った決断よりも大きい。
時間は過ぎたら、二度と戻ってこないからだ。
六三が私たちに教えてくれること
坎卦の六三は陰爻で、陽の位にあって、位置が正しくない。
位置が正しくないから、進退両難になる。
前に進んでも間違いだし、後ろに下がっても間違い。
だけど答えは「適当にどっちか選ぶ」でも「諦めて選ばない」でもない。
「勿用」——まずは動かない、ということだ。
動かないのは、ただダラけているんじゃない。
動かないのは、このためだ——
- まず状況をはっきり見るため
- まず自分の気持ちをはっきりさせるため
- まず準備を整えるため
状況が見えて、気持ちがはっきりして、準備が整ったら、それから動こう。
その時の一歩一歩は、全部正しいものになる。
だから、もし今あなたが進退両難な場所に挟まっているなら:
焦らないで。
むやみに選ばないで。
あちこちに聞きまわらないで。
まず静かになって、情報を集めて、自分の底线(譲れないライン)をはっきりさせて、自分に期限を設けよう。
待つべき時は待ち、動くべき時は動く。
それが本当の叡智だ。