入社したては目立つな、まず「隠れ」を学べ——坤卦初六「履霜堅氷至」の仕事の知恵
新入社員が入社直後に陥りがちな失敗は、自分を証明しようと焦りすぎることだ。坤卦の初爻は「初六:履霜堅氷至(霜を踏めば堅氷の至る)」と説き、兆しを察して進退をわきまえ、目立ちすぎないことの大切さを教えてくれる。時に「何をしないか」が「何をしたか」よりも重要なのだ。
坤卦の初六「履霜堅氷(りそうけんぴょう)」は、小さな兆しから大きな事態を見通す「見微知著(けんびちちょ)」の道理を説いている——薄い霜を踏んだら、堅い氷ができる日も遠くない、ということだ。
友人の会社に新しくインターンが来たのだが、その女の子がとにかく積極的なんだという。
どれほど積極的かって?朝は一番に出社し、夜は最後まで残る。同僚の荷物受け取りやコーヒー買い、書類整理まで進んで手伝う。会議では他の人が口を開く前に、真っ先に手を挙げて発言する。上司が仕事を割り振ろうとすると、一番に「私がやります!」と手を上げる。
普通ならこういう社員は重宝されるはずだよね?でも、結果は違った。
友人によると、社内で彼女を好きな人は一人もいないんだとか。
私は「そこまで言う? 勤勉なのが悪いってこと?」と聞いた。
彼はこう答えた。「勤勉自体は悪くない。でも、彼女の勤勉さは周りを不快にさせるんだ。何にでも首を突っ込み、何にでも意見を言いたがる。ベテラン社員の話に横やりを入れるし、上司が仕事の説明を終えていないのに先回りして引き受ける。みんな口には出さないけど、心の中では『新入りのくせに何がわかるんだ』って思ってるよ」
私は話を聞いて笑った。
「あの子は悪い子じゃないんだよ。ただ、坤卦の初六を知らないだけだ」と私が言うと、
友人は「どういうこと?」と聞き返した。
「坤卦の初めの爻は、六文字で『履霜、堅氷至(しょうにふみて、かたこおりいたる)』って書くんだ」
霜を踏んだら、氷が厚く張り詰める日が近づいているとわかるはずだ、ってことだね。
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「履霜堅氷至」は一体何を説いているのか
坤卦は純粋な陰の卦で、六つの爻がすべて陰だ。乾卦が「龍が水から天へと飛び上がる」様子を表すなら、坤卦は「大地が薄い霜から堅い氷へと変わっていく」様子を表している。
初六は坤卦の一番下にある最初の陰爻で、爻辞は「履霜、堅氷至」の六文字。
霜を踏めば、堅い氷がやってくるとわかる——。
この六文字は単純に見えて、実は二つの意味が込められている。
一つ目は**見微知著**——小さな兆しから、今後の展開を読み取ることだ。地面に霜が張っているのを見たら、寒くなって冬が来て、川も氷るとわかる。氷が張ってから慌てて気づく必要はない、ということ。
二つ目は**勢いに従う**——陰は少しずつ積み重なっていくもので、いきなり氷になるわけではない。物事の進展には過程があるから、その流れに逆らわず進まなければならない。霜が張り始めたばかりの頃に氷を掘ろうとしたら無謀だけど、氷が厚く張ってから歩けば安全だ。
これを職場に置き換えるとどうなるか?
つまり——新しい場所に来たばかりの頃は、焦って目立とうしないほうがいい、ってことだ。まずは様子を見て、その場の雰囲気や人間関係、ルールがどうなっているかを把握する。見極めてから動き出しても、遅くはない。
多くの新人がこの道理をわかっていない。最初から自分の実力を見せつけようとして、「自分はすごい」とみんなに知らしめたがる。でも結果はどうだ? 本人は「自分をアピールしている」つもりでも、周りからは「目立ちたがり」に見える。ベテランの立場を奪い、他人の邪魔をしていたら、今後の仕事がやりやすくなるわけがないだろ?
霜をすでに踏んでいるのに、冬が来るとも気づかず、裸足で飛び跳ねているようなもの。そりゃあ、凍える思いをするのも当然だよ。
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なぜ「隠す」ことは「見せる」ことより大切なのか
坤卦の知恵は、乾卦とはちょうど逆の発想だ。
乾卦が「どう上に向かって進むか」を教えるのに対し、坤卦は「どう下に沈み込むか」を教えてくれる。乾卦は剛健で進取の精神なら、坤卦は厚い徳で万物を受け止める「厚徳載物(こうとくさいぶつ)」の姿だ。
多くの人は「坤卦って弱気で、受け身で、損をするためのものでしょ」と思っている。でもそれは違う。坤卦の力は、別の種類の強さなんだ。
考えてみてほしい。大地が万物を支えられるのは、自分が低い位置にあるからだ。海が川の水をすべて受け入れられるのは、一番低い場所にあるから。位置が低ければ低いほど、たくさんのものを受け入れられる。
人間も同じだ。新しい環境に来たばかりの頃は、自分を少し低く置く。それは自分ができないからじゃなく、今後のために余裕を作っているんだ。余裕を大きく作れば作るほど、将来たくさんのものを受け入れられるようになる。
私の知っている先輩で、大手企業に入社した当初、丸半年の間、ほとんど会議で発言しなかった人がいる。他の人が企画を議論している間、彼はただ真剣に話を聞き、メモを取っていた。誰かが意見を求めても「まだ入ったばかりで勉強中なので、皆さんの話を聞かせてください」と答えていた。
「あいつはバカだ」「何もできないやつだ」と思っていた人もいた。でも半年後、彼が口を開くと、周りは全員驚いた。この半年で一人ひとりの考え方、各部門の利害関係、各プロジェクトの経緯……すべてを完璧に把握していたんだ。彼の言葉は、一語一句が核心を突いていた。
後に彼の昇進は異常な速さだった。普通なら五、六年かかるポジションに、彼は三年で上り詰めた。
誰かがコツを聞くと、彼はこう答えていた。「コツなんてないよ。ただ、入ったばかりの頃は話を少なくして、よく観察していただけだ。地形をしっかり把握してから歩けば、落とし穴にはまらないからね」
ほら、これこそ坤卦初六の知恵だ。
ずっと隠れていろと言っているんじゃない。まだ状況を見極められていないうちは、焦って見せびらかさないほうがいい、ってことだ。早く出しすぎたり、間違ったタイミングで見せたりしたら、後から引っ込めることなんてできないからね。
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「履霜」の段階で、正しく「隠す」にはどうすればいいか
「隠す」ってのは、何もしないでダラダラ過ごすことじゃない。戦略的に力を蓄えることだ。
ここで「隠し方」を三つ紹介しよう。
**一つ目は、目を鋭くすること。**
目が鋭いってどういうこと? 物事の裏側にある本質を見抜けることだ。
誰と誰が仲がいいのか? 誰の言葉が決め手になるのか? どの部署が力を持っていて、どの部署が形だけなのか? 会議で誰が本音を話し、誰が体裁だけの言葉を並べているのか?
こうしたことは、就業規則に書かれていないけれど、全部が本当のルールなんだ。見抜けなければ、必ず落とし穴にはまる。
目を鋭くするにはどうすればいい? よく聞き、よく見て、よく考えること。他人が雑談しているときは口を挟まず、耳を澄まして聞く。会議では焦って発言せず、まず一人ひとりの表情や反応を観察する。時間が経てば、自然と見えてくるようになる。
**二つ目は、手を堅実にすること。**
隠すってのは何もしないことじゃなく、自分がやるべきことをきちんとやることだ。
自分の担当仕事は、完璧にこなす。他人から頼まれた仕事も、確実にやり遂げる。でも、自分の範囲を超えたことには、むやみに手を出さない。
範囲を超えるってどういうこと? 例えばインターンなのに、ベテラン社員に仕事のやり方を指導しようとするとか。新人なのに、会社の戦略にとやかく口を出すとか。
手が堅実ってのは、自分の立場をわきまえ、やるべきことをやり、やるべきじゃないことはやらない——そういうことだ。
**三つ目は、口を堅くすること。**
これが一番見落とされやすいけど、一番トラブルの原因になりやすい。
新しい場所に来たばかりの頃、一番やってはいけないのはおしゃべりだ。どの一言が人を怒らせるかわからないし、どの言葉が広まってしまうかもわからない。
少なく話すのは、黙っていろってことじゃない。言うべきときは言うけど、言う前にちゃんと頭で考えるってことだ。この言葉を言って自分に得はあるのか? 誰かを傷つけないか? どんな結果になるか?
よく考えてから話す。考えがまとまらないなら、話さないほうがいい。
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最後に少しだけ
話を最初のインターンの子に戻そう。
後に友人が彼女と話す機会があり、「履霜堅氷至」の道理を教えてあげたんだという。
女の子は頭が良くて、すぐに理解してくれた。それからは、先回りして発言することもなくなり、何でもかんでも仕事を引き受けることもなくなった。他人の話は真剣に聞き、自分の仕事は丁寧にこなす。聞かれたときだけ意見を言うようになり、しかもその言葉はすべて考え抜かれたものだった。
それからしばらくして、みんなの彼女に対する態度は変わった。以前は「軽はずみ」だと思われていたのが、今では「落ち着いている」と思われるようになった。「目立ちたがり」だったのが、「頼りになる」と思われるようになったんだ。
ほら、同じ人間で、能力は何も変わっていないのに、ただ「振る舞い方」を調整しただけで、結果がまるで違ってくる。
時代は変わり、やり方はどんどんシンプルになっていく。でも、一つだけ昔から変わらないことがある——人が低い位置にいるときは、「隠す」ことを学ばなければならない、ってことだ。
隠すのは弱さじゃない、知恵だ。隠すのは諦めじゃない、力を溜めることだ。
霜を踏んでいるときは、焦って走り出さないほうがいい。まず足元の霜を見て、堅い氷の姿を思い描いてから、一歩一歩確実に進んでいこう。
氷が厚く張ってからなら、その上で踊ったって、誰も文句は言わない。
坤卦の道理は、突き詰めれば一言だ——地勢が低ければ低いほど、多くのものを受け止められる。
自分を低く置けば置くほど、将来もっと高い場所に立てるようになるんだ。