頤卦六三:なぜ養生するほど虚しくなる?「拂頤,貞凶,十年勿用,無攸利」——方向を間違えると、努力すればするほど悪くなる
頤(い)卦の六三には「拂頤(ふつい)、貞凶、十年勿用、無攸利(ゆうこうりなし)」とある。養生の正道に背けば、頑張って続けても凶で、十年も良い結果が出ず何の得もない。多くの人は懸命に養生するも方法を誤り、かえって体調を崩している。本稿では養生法の正誤判断と早期の損切りの視点から、この爻の知恵を読み解く。
頤卦六三は「頤を拂う(ふつい)」――
養生の方向が逆になって、本末転倒になっている。
六三になると、状況はさらに深刻になる。
爻辞にはこうある:「拂頤、貞凶、十年勿用、無攸利(ふつい、ていきょう、じゅうねんもちょう、むゆうり)」
拂とは、背くこと。
拂頤とは、養生の正道に背くことだ。
貞とは、堅持し、固守すること。
貞凶とは――堅持すればするほど、危険になるということ。
十年勿用とは――十年経っても良い結果が出ず、無駄だということ。
無攸利とは――何の得もないということ。
この言葉を現代語に訳すと、とても心に刺さる:
あなたの養生法は間違っていて、
正道に背いている。
それでもずっと堅持していると、
続ければ続けるほど、状況は悪くなる。
十年や八年経っても良い結果は出ず、
無駄な努力で、何の得もない。
この言葉はとても厳しい。
だけど、とても真実だ。
世の中にはこういう人が多すぎる――
懸命に養生して、
懸命に体を鍛えて、
懸命にいろいろな健康食品を食べているのに、
体が良くなるどころか、どんどん悪くなっている。
なぜだろう?
方法が間違っているからだ。
方向が間違っていれば、
努力すればするほど、目標から遠ざかってしまう。
「拂頤」な人は、どんな間違いを犯しているの?
私は懸命に養生しているのにどんどん体調が悪くなる人をたくさん見てきたが、
彼らはたいていこのいくつかの間違いを犯している。
間違いその一:過度なダイエットによる減量。
多くの女性が、痩せるために
ご飯を食べない、あるいはほんの少ししか食べない。
断食だの、辟谷だの、極端な低炭水化物法だの……
聞こえは専門的だが、
実際はただの飢えだ。
短期的に見れば、体重は確かに減る。
だけど時間が経つとどうなる?
生理不順になったり、
髪が抜けたり、
顔色が黄色くなったり、
免疫力が低下したり、
ちょっとしたことで病気になったりする。
もっと恐ろしいのは、
ある程度まで飢えると、
過食症になってしまうことだ。
そしてさらに太って、
またダイエットして、また過食して……
悪循環だ。
これこそ「拂頤」だ。
基本的な生理のリズムに背いているのだから、
どれだけ堅持しても、体はどんどん悪くなる一方だ。
十年経っても回復しない。
間違いその二:過度な運動。
いきなり激しく鍛え始める人がいる。
普段運動しないのに、
突然フィットネスを始めようと思い立って、
いきなり5キロ走ったり、2時間鍛えたりする。
結果はどうなる?
膝を痛めたり、筋肉を挫いたり、
横紋筋融解症になったり……
また、運動依存症になる人もいる。
一日運動しないと罪悪感があって、
運動すればするほど安心感が得られると思っている。
どんどん運動量が増えて、どんどん疲れて、
体がずっと疲労状態になり、
免疫力が低下して、
かえって病気になりやすくなる。
過ぎたるは及ばざるが如し。
運動は良いことだが、
過度な運動は養生どころか、体を傷つけることになる。
間違いその三:健康食品のむやみな摂取。
ありとあらゆる健康食品を食べて、
ビタミン、ミネラル、プロテイン、
魚油、レシチン、ブドウ種子エキス、
酵素、青汁、デトックス美容……
家が薬局みたいに積み上がっている。
たくさん食べれば良い、
高いものほど健康になれると思っている。
結果はどうなる?
肝臓や腎臓の機能に問題が出たり、
栄養バランスが崩れたり、
補うべきものが補われず、補わなくていいものを摂りすぎたりする。
薬は三分の毒があると言うが、
健康食品も同じだ。
摂りすぎたり、間違って摂ったりすれば、
どちらも体を傷つける。
間違いその四:盲目的な流行追い。
今日「この養生法が良い」と聞けば、すぐ真似してやる。
明日「あれが効く」と聞けば、またそれをやる。
今日は菜食、明日は断食、
明後日はお灸、その次は刮痧……
流行っているものは何でも試して、
話題になっているものは何でも追いかける。
一度も考えたことがない――
これは自分に合っているのか? 自分の体はこれを必要としているのか?
結果はどうなる?
体をあれこれと振り回して、
どんどん悪くなる。
お金はたくさん使ったのに、
体は少しも良くならない。
間違いその五:不安に駆られた養生。
養生しながら、不安になっている。
これを食べたら健康に悪いんじゃないかと心配し、
あれをやりすぎたら良くないんじゃないかと心配し、
自分の体に問題が起きるんじゃないかと心配している。
養生すればするほど不安になり、
不安になればなるほど養生にはまる。
悪循環に陥っている。
養生は本来、健康のため、リラックスのためのものだ。
なのにかえって新たなストレスの原因になっている。
これこそ本末転倒じゃないか?
なぜ間違った方法なのに、人はずっと堅持してしまうの?
明らかに方法が間違っているのに、
明らかに体がどんどん悪くなっているのに、
なぜやめないんだろう?
なぜ「貞凶」――ずっと堅持して、ずっと間違い続けるんだろう?
三つの理由がある。
一つ目の理由:埋没費用。
もうこんなにお金も時間も労力もかけたのに、
今やめたら、今までのが全部無駄になるんじゃないか?
だめだ、続けなきゃ。
もう少し堅持したら効果が出るかもしれない、と。
これが埋没費用効果だ。
投入すればするほど、やめにくくなる。
たとえそのことが明らかに間違っていても、
意地になって続けてしまう。
だけど続ければ続けるほど投入が増えて、
さらにやめにくくなる。
どんどん深みにはまっていく。
二つ目の理由:洗脳されている。
今はネットにいろいろな養生ブロガーや健康の専門家がいて、
色々なことを言っている。
誰もが自分の方法が一番良いと言い、
他の人のは間違っていると言う。
毎日彼らのコンテンツを見ているうちに、
見ているうちに信じ込んでしまう。
彼らの言う通りにやり、
彼らの売るものを買う。
完全に自分で考える力を失っている。
おかしいと気づいた頃には、
もう洗脳が深くなっている。
体に問題が起きても、
「自分のやり方が足りなかっただけで、方法が悪いわけじゃない」と思ってしまう。
そしてさらに懸命に間違いを続ける。
三つ目の理由:悔しいから。
こんなに長く堅持してきたのに、
効果がないはずがない。
きっと自分の努力が足りないんだ。
きっとまだ堅持が足りないんだ。
そう思ってさらに努力し、
さらに極端になる。
間違いがもっとひどくなる。
人間とはそういうもので、
自分が間違っていたと認めるのは難しい。
特に大きな代償を払った後はなおさらだ。
間違い続ける方を選んでも、
当初の選択が間違っていたと認めたくない。
これが「貞凶」だ――
堅持すればするほど、危険になる。
自分の養生法が正しいかどうか、どう判断するの?
では、自分の養生法が正しいのか間違っているのか、
どうやって知ればいいんだろう?
簡単だ、三つのサインを見ればいい。
一つ目のサイン:体調は良くなっているか、それとも悪くなっているか?
これが一番直接的だ。
しばらく養生してみて、
体は元気になったか?
それとも疲れやすくなったか?
病気になりにくくなったか?
それともちょくちょく体調を崩すようになったか?
顔色は良くなったか?
それともどんどん悪くなったか?
もし良くなっているなら、方法が正しい可能性がある。
もし悪くなっているなら、
他の人がどんなに良いと言っていても、
その方法は自分に合っていない。
あなたの体こそが、
最高の検出器だ。
体は嘘をつかない。
二つ目のサイン:気持ちが楽になったか、それとも疲れるようになったか?
良い養生法というのは、
あなたをもっと楽に、もっと気持ちよく、もっと自在にしてくれるはずだ。
もしあなたの養生法が疲れるもの、不安になるもの、苦痛なもので、
毎日義務のようにやっているのなら、
絶対に間違っている。
養生は楽しむもので、
苦しむものじゃない。
生活をより良くするもので、
新たな負担を増やすものじゃない。
もし養生すればするほど疲れて、
養生すればするほど不安になるのなら、
きっとどこかが間違っている。
立ち止まって、調整しよう。
三つ目のサイン:長く続けられるかどうか?
本当に良い養生法というのは、
長く続けられるものだ。
生活に溶け込んでいて、
自然にやるようになるものだ。
もしある方法が、
歯を食いしばって堅持しなきゃいけない、
強い意志がないと続けられないものなら、
たぶん自分には合っていない。
あるいは、その方法自体が間違っている。
本当に正しいものは、
気持ちの良い、自然な、持続可能なものだ。
無理して続けているものは、長続きしない。
間違いに気づいたら、どうすればいいの?
自分の養生法が間違っていると気づいたら、
どうすればいい?
三文字――すぐやめろ。
悔しがらないで、
無駄になると思わないで、
「もう少し堅持してみよう」なんて思わないで。
方向が間違っているなら、
立ち止まることこそが進歩だ。
損切りすることこそが、得なんだ。
やめた後はどうするの?
三つのステップがある。
ステップ1:体を自然な状態に戻す。
まずは何もかも振り回すのをやめよう。
すべての健康食品をやめて、
極端な食事をやめて、
過度な運動をやめる。
ただちゃんと食べて、ちゃんと寝て、ちゃんと休む。
体に自分で回復してもらう。
体には強い自然治癒力がある。
あなたが振り回さなければ、体は自然に良くなっていく。
ステップ2:体の感覚を取り戻す。
多くの人は養生に熱中するあまり、
自分の体とのつながりを失っている。
自分の体が何を必要としているのか全くわからず、
ただ他人が「これが良い」と言うものだけを知っている。
もう一度あなたの体とつながりを取り戻そう。
感じてみて――
何を食べると気持ちがいい?
何時間寝ると一番元気になる?
どんな運動をすると一番楽しい?
どんな時が一番調子がいい?
あなたの体が答えを知っている。
あちこち他人に聞かないで、
自分の体に聞いてみよう。
ステップ3:一番簡単なことから始める。
体がだいたい回復したら、
また養生を始めよう。
だけど今回は、
一番簡単で、一番基本的なことから始める。
ちゃんと食べて、
ちゃんと寝て、
毎日散歩して、
良い気分でいる。
ただそれだけ。
これらがちゃんとできれば、
もう十分すごいことだ。
最後に
頤卦六三の「拂頤、貞凶、十年勿用、無攸利」は、
とても厳しい言葉だけど、
とても清醒な言葉でもある。
これはあなたにこう教えてくれている――
努力は、正しさと同じじゃない。
堅持は、役に立つことと同じじゃない。
方向が正しくてこそ、
堅持に意味がある。
方向が間違っていれば、
堅持すればするほど、状況は悪くなる。
養生ということに関しては、
焦らないで、混乱しないで、流行に乗らないで。
まず何が正しいのかをちゃんと理解してから、
始めればいい。
間違っていたら、
すぐに調整すればいい。
自分が間違っていたと認めるのを恐れないで。
間違いに気づいたらすぐ直すのが、
進歩なんだ。
一本道を突き進むよりずっとマシだ。
あなたが自分に合った養生法を見つけて、
どんどん健康になって、
どんどん元気に生きられますように。